たんぽぽの綿毛が風に乗って飛んでいくように「旅立ち」を感じたい。:日常のひとコマから感じたこと
タンポポの「旅立ち」の準備が、そろそろ整いました。
あちらこちらで、可愛いまん丸の綿毛が、首を長く伸ばしています。
たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやる
いつかおまえも飛んでゆくから
俵万智
この短歌は、歌人・俵万智さんが、息子さんが小学生に上がる頃に読まれた歌です。
自分の「手の中」で大切に愛おしみ育んでいる息子。「手の中」に、すっぽりといてくれる息子。でも、「手の届かない」外の世界に巣立っていく日が確実に来る。
巣立つ切なさと、見送る誇らしさが、31文字にギュッと詰まっています。
この歌は、2010年3月に発行された「俵万智の子育て歌集 たんぽぽの日々」の中に収められています。
タンポポの綿毛が、まるまると膨らむ季節に、いつも心の中に浮かんでくる歌です。
やり残した事はありません。
やりたい事は、全てやっています。
「やり残した」ではなくて、「やりたくて準備していること」は、たくさんあります。
「やりたくて準備していること」は、例えるならば、お腹の中に宿した大切で愛おしい私の子供たち」
準備万端で待っていると、突然、心地よい「風」がふわっと迎えにきてくれます。
「お待たせ! さあ、行こう!」
「風」に乗る瞬間、「子供たち」はちょっと不安になります。
今まで「この場所」にいたから、安心してのんびり準備することができました。これからは、自分で降り立った「場所」で、根を張り芽を出し、花を咲かせて行かなくてはいけないからです。
でも、もう、この「場所」では何もすることがありません。
何もすることのない「場所」に、もうこれ以上、居続ける事はできません。
準備はできているし、何よりも「役割」が終わったから。
風向きが変わってしまわないうちに、出発しなくては。
「行ってきます」
「ママ」に心配をかけたくないので、最高の笑顔で、大きく手を振って、「子供たち」は「風」と一緒に行ってしまいました。
「出会う」事は「別れ」に向かって進み始めること。
「別れ」は「旅立ち」
例えばそれが、突然だったとしても、気まぐれな「風」の気分が変わってしまったら、旅を始めるチャンスを逃してしまいます。
「ママ」は戸惑います。でも、旅立った「子供たち」が、心配しないように、最高の笑顔で、大きく手を振って、「行ってらっしゃい」と送り出したい。
辿り着いた「場所」で、根が張れるだろうか、芽が出せるだろうか、花を咲かせることができるだろうかと、心配は尽きないけど、当の本人さえもわからないことを、心配しても、わからないし、もうこれ以上は、何もしてあげられる事はありません。
何もしてあげることができない「場所」に、引き止める事はできません。この「場所」での自分のできる「役割」は十分に果たしました。
「きっと大丈夫。なんとかなる。」
信じて送りだせる自分でありたいと、「ママ」は思いました。
今年は、5月6日から20日まで、「立夏」です。
緑が新芽を吹き、成長し、田植えや種まきも始まります。
暦では「夏」が立ち上がりました!
思いっきり背伸びをして、大きく呼吸をする。
「伸ばしたい芽」の旅立ちの時が来ました。