「止まってしまった」家の香り:居心地の良い居場所は「動いている」:「運」の良い人はきっとこんな感じ
振り返ってみると、私はずっと「人」に会う仕事をしています。
それは、目の前の「人」に会うというよりも、目の前の「人」の「未来」も含めて会うといった感じです。
特に、10年間働いた「行政機関」での仕事は、今の仕事の「核」となる経験をたくさんさせてもらいました。
目の前の「人」に対して、今の「居場所」ではなく、これからのための「居場所」を探していく。
「地域」「医療」「福祉」のツールを使って、「一番その人らしくいられる居場所」を、他職種や地域を巻き込んで、「チーム」で「人」を支えていく。
やりがいもありますが、「過去も含めた生活」に踏み込んで、「人」を取り巻く「人達」の「生活」も考慮して、縛られた「制度」の中で、決定をしていかなくてはいけないので、何もかもしてあげることはできません。
言いなりになっていた方が「良い人」でいられるし、丸く収める方が、その場しのぎではありますが、とりあえずスムーズには進みます。
でも、それでは「専門職」でなくても、誰でもできるレベルです。
「できない事」を受け入れてもらい、「できる事」の中から選んでもらうしかないのです。
最高の「できる事」を提示することが、「専門職」の仕事です。
「本人」の「プライド」がないと、押し付けになってしまい、「未来の生活」は「押し付けられた諦めの未来」になってしまいます。
本人の「プライドの芽」を出してもらう。
それは、埋まっている「プライドの種」に水をあげる仕事です。
「占い」もまた同じです。
埋もれてしまった「種」は、封印した「本心」の中にあります。
それに気づいてもらうには、「傾聴」することが効果的です。
「傾聴」には、段階があります。
まずは「吐き出すために聴く」
否定せず、ひたすら聴きます。
ただし、この段階はまだ「しゃべる」には勇気がいる状態です。
「どうせ受け入れてもらえない」
「どうせわかってもらえない」
そんな気持ちが「蓋」をして、最初からは話すことができません。
でも、否定されない態度は、やがて「安心感」を感じ、少しずつ、話始めることができます。
そして「蓋」が外れると、とどめもなく言葉が溢れます。
でも、溢れ出す感情とともに出る「言葉」なので本音ではありません。
内容は、たいてい「盛って」います。
感情も含めて「吐き出す」のが、この段階の「テーマ」です。
穏やかに、あたたかく、包み込むように。
ここは「安心できる場所」であると感じてもらう段階です。
次は「気づくために聴く」
しっかりと「吐き出す」ことができた「気持ち」は、少し「ゆるく」なります。
ゆるくなると、「受け入れる」隙間ができます。
現状を把握するために「事実確認」をしてもらいます。
そのための「振り返り」や冷静に「現状と向き合う」必要があります。
こちらから「質問」をすることで、「答え」を導き出します。
向き合うと、認めたくなくて悲しくなったり、涙が出たり、感情が不安定になったりします。
冷静に、淡々と、厳しく、でも優しく。
「このままこの場所にはいられない」ことに気づいてもらう段階です。
次の段階は「動くために聴く」
この段階まで来ると、後は勝手に進んでいきます。
「気づく」と「決まり」ます。
テンションを上げて、楽しく。
「次の居場所」は手を広げて待っていてくれるので、後は行くだけ。
行くための「具体的な方法」を提示して、「傾聴」は終了します。
「気づくために聴く」までが、とても長い道のりです。
一回では終わらずに、何度も「訪問」をすることもあります。
「訪問」を繰り返しても、残念ながら最後の段階まで進むことができなかったこともたくさんあります。
でも、そこは仕方ないと「割り切る」気持ちが大切で、「対人援助職」が辛くなるのは「割り切る」ことができないからです。
「良い人」は「割り切る」ことができません。
プロとして仕事を続けて行くためには「良い人」を捨てないとできないのです。
たくさんのお宅を訪問し、たくさんの方にお会いして行く中で、「自分を諦めている人」に共通する「香り」があることに気づきました。
これは、私だけではなく、他の職員も感じる「香り」です。
それは、「乾いた木が燻された」香りです。
玄関を開けた瞬間に感じるし、「人」からも感じます。
その香りがする「場所」は時間が止まっているのです。
「乾いた木が燻された香り」がする家は、空気が動いていません。
窓も開けず、カーテンも開けず、ずっとそのまま。
キッチンも、水場に水の流れがなかったり、火を起こした感じもありません。
ドアも開けないので、「人」の動きもありません。
動くものがないので、家の「空気」も止まったままです。
「乾いた木が燻された香り」がする「人」は、心が動いていません。
いつも「どうせ」「もう遅い」「やっても無駄」
それ以外の言葉は出てきません。
心が動かないので、「成長」も止まったままです。
森羅万象のものには全て「気」があります。
「気」には、「木」「火」「土」「金」「水」の五つのタイプがあって、それぞれ特徴あります。
その中で「木の気」だけ、唯一、生命が宿っている「気」です。
「木」は「成長」の気
「止まってしまった家」や「止まってしまった人」に感じた「乾いた木が燻された香り」は、きっと成長することを諦めてしまった「気の香り」なのかもしれません。
「木」に「水」を上げて、太陽の「火」があると蘇ります。
「水」は「慈愛」
「火」は「情熱」
そして「土」(信頼)にしっかりと根付くことができると、「木」は再び蘇り、すくすくと天高く、まっすぐに、伸びていくことができます。
「対人援助職」の仕事は、乾いてしまった「木」に、「水」をあげる仕事なのかもしれないと思います。
そして、鑑定の仕事もまた、同じだと思います。