「前向き」であろうが「後ろ向き」であろうがどちらも「自分」:陰陽説(陰陽の相互転化)
「何事も、前向きに捉えて、ポジティブに頑張りたい」
そのように語られるお客様に対しては、あえて「ネガティブな景色」をお伝えしています。
「ポジティブ」はとても大切だと思っていますが、「全てポジティブ」はあり得ないからです。
全てのものには、相反する「気」が宿っています。
陰陽のバランスをとりながら、「全て」がそこにあるのです。
「陰陽説」は、古代中国で生まれた思想です。
全てのものは「陰陽」で成り立ち、その成り立ち方には4つの特徴があります。
1)陰陽の対立
相反するものは、お互い助け合って存在し、一つの統一した世界を作っている。
2)陰陽の相根作用
陰陽は、同じ根を持ち、依存しながら存在している。相手がいなくなって存在することはできない。
3)陰陽の消長平衡
陰陽の量的関係は、絶えず変化して、静止しない。一定の範囲の中で陰が増えると陽が減り、陽が増せば陰が減る。
4)陰陽の相互転化
対立する陰陽が、ある条件の元で極まると、反対の性質に転化(変化)する。
この4つの特徴を知った上で、「ポジティブ」を採用することが、とても大切です。
「ネガティブ思考」で判断し、「ポジティブ思考」で行動する。
「リスク」に向き合い回避するための「最善」の対策を「ネガティブ」に検討し、対策をしっかりと練る。
「失敗する気がしない」を、胸を張って「ポジティブ」に行動する。
「失敗する気」がないから、すぐに「結果」が出なくても、諦めずに「ポジティブ」に行動し続ける。
「結果」を出す人の行動は、例外なくこうしています。
「結果」が出せない人は、この逆パターンです。
「リスク」は、なんとかなりそうな気がすると「ポジティブ」に思い込み、「リスク」を「見なかった事」にする。
「なんとかならない」事態に対して、対策を準備していないため、「ポジティブ」がひっくり返って「ネガティブ」となり、「もう無理だ」と諦めて投げ出してしまう。
やり続けるためには、「ポジティブ」思考が必要です。
だから、「成功者」は、「とてもネガティブな、超ポジティブ思考」の持ち主です。
作家 星新一さんは、「ショートショート」の作品を1000以上執筆されています。
どれもとても読みやすく、でも、核心を鋭くついていて、どの作品も考えさせられるものばかりです。
その中でも、「おーい でてこーい」は、「陰陽の相互転化」の世界について書かれていて、読み終わった後、「背中に背負った荷物が、じわりじわりと重くなっていく」ような、恐ろしさを感じさせる物語です。
ある村で、台風が過ぎた後、一つの小さな「穴」が開いていることに、村人が気がつきました。
小さな小石を「穴」に投げ込んでみましたが、何も反応がありません。
「おーい、でてこーい」と叫んでみたけど反応がありません。
いろいろなものを「穴」に投げ込んでも、何の反応もなく、「穴」は何でも受け入れて、飲み込んでくれました。
何でも捨てられるので、みんなが様々なものを「穴」に捨てます。
ものはどんどん多くなり、捨てる人も増えていき、国を挙げて「不用品」を捨てました。
めんどくさいものを「穴」は全て飲み込んでくれるので、国はどんどん「発展」していきます。
そして文明は発展し、あっという間に「栄華」を極めたのです。
ある時、どこからともなく、小石が空から降ってきた気がしました。
「おーい でてこーい」
何だかそんな声がしたような気が・・・・
めんどくさいものは、全て「穴」の中に封印して「なかったこと」にした結果、この先、この「国」はどうなっていくのだろう。
「発展(陽)」するためには、しっかりと「めんどくさい副産物(陰)」とも、向き合わなくてはいけない。
「めんどくさい副産物(陰)」に蓋をして成り立つ「発展(陽)」が、いかに不安定であるかを、「おーい でてこーい」は教えてくれていると思います。
物理学では、宇宙を構成する全てのエネルギー量は、いかなる場合でも一定を保っている(エネルギー不変の法則)と考えられています。
木が燃えてしまっても、燃えることによってでた「排出物」を合算すると、「全体の総量」は変わらない。変わるのは「形」だけ、ということです。
どのような「形」を作りあげようとも、結局は「宇宙のエネルギー量」は変わりません。
「宇宙で起こること」は「自分の中に起きる」ことです。
どのような「形」が出来あがろうとも、「自分のエネルギー量」は変わりません。
「成功」しようが「失敗」しようが、どちらとも「自分のエネルギー」は一定です。
だから、「成功」しようが「失敗」しようが、「自分」であることには変わりないということです。
「おーい でてこーい」は、『ボッコちゃん』新潮社 に収録されています。